金融政策の主役「公開市場操作」って何だろう?


日本銀行(日銀)って、よくニュースに出てきますよね。実は、私たちの暮らしと密接に関わる「物価の安定」という大事な目標のために、様々な「金融政策」を行っています。その中でも特に重要なのが、「公開市場操作(こうかいしじょうそうさ)」というものです。なんだか難しそうな言葉ですが、簡単に言うと、日銀が金融機関と「お金のやりとり」をすることで、世の中に出回るお金の量を調整し、金利をコントロールしようとする仕組みのことなんです。

 

公開市場操作の具体的な中身

日銀は、私たちの生活でお金を貸し借りするように、金融機関を相手に「資金の貸し借り」や、「国債などの売買」を行います。これによって、銀行などの金融機関が日銀に預けているお金(準備預金と呼びます)が増えたり減ったりして、市場全体のお金の量が調整されるわけです。

この公開市場操作には、主に次の2つのパターンがあります。

 

1. 買いオペ(買いオペレーション)

これは、日銀が金融機関から国債などを「買い取る」操作のことです。

  • どういうこと? 日銀が「じゃあ、この国債、買い取りますね」と言って、金融機関から国債などを購入すると、その代金が金融機関の日銀にある口座(日銀当座預金)に振り込まれます。すると、金融機関が自由に使えるお金(準備預金)がグッと増えることになりますよね。

  • どんな効果があるの? 金融機関のお金が増えるということは、世の中全体にお金がたくさん供給されるのと同じです。お金がたくさんあると、金融機関同士でお金を貸し借りする時の金利(「無担保コール翌日物金利」という、金融機関が1日でお金を貸し借りする時の金利が代表的です)は、安くなる傾向にあります。まるで、お店に商品がいっぱいあると値段が安くなるのと同じイメージです。これは「金融緩和」と呼ばれ、景気を良くしたり、物価が下がりすぎるのを防いだりするために行われます。

 

2. 売りオペ(売りオペレーション)

こちらは、日銀が持っている国債などを金融機関に「売り渡す」操作です。

  • どういうこと? 日銀が「この国債、どうですか?」と金融機関に売却すると、金融機関はその代金を日銀の口座から支払います。そうなると、金融機関が自由に使えるお金(準備預金)が減ってしまいますよね。

  • どんな効果があるの? 金融機関のお金が減るということは、世の中からお金が吸収されるのと同じです。お金が少なくなると、金融機関同士のお金の貸し借りも難しくなるので、金利は高くなる傾向にあります。これは「金融引き締め」と呼ばれ、景気が熱くなりすぎたり、物価が急激に上がりすぎたりするのを抑えるために行われます。


 

金利をコントロールするってどういうこと?

日銀は、これらの買いオペや売りオペをうまく使い分けて、先ほど触れた「無担保コール翌日物レート」という短期の金利を、目標とする水準に誘導しようとします。この金利が、実は日本の「政策金利」の主要なターゲットなんです。

  • 金利を下げたい時(金融緩和): 日銀は積極的に買いオペを行って、市場にお金をジャブジャブ供給します。短期金利が下がると、銀行が企業や私たちにお金を貸す時の金利も下がりやすくなります。そうすると、企業はお金を借りて新しい工場を作ったり、お店を開いたりしやすくなりますし、私たちも住宅ローンを組んだり、何か大きな買い物をしたりしやすくなりますよね。こうして、投資や消費が活発になり、経済全体が元気になると期待されます。

  • 金利を上げたい時(金融引き締め): 逆に、日銀は積極的に売りオペを行って、市場からお金を吸い上げます。短期金利が上がると、銀行の貸出金利も上がりやすくなります。企業や私たちがお金を借りにくくなったり、借りる費用が高くなったりすることで、投資や消費を少し抑え、経済が熱くなりすぎたり、インフレが進みすぎたりするのを防ぐ効果があるんです。


 

「準備預金制度」とのつながり

銀行などの金融機関は、預金の一部を必ず日銀の口座に預けておくことが法律で義務付けられています。これが「準備預金」です。公開市場操作は、この金融機関の準備預金の量を直接増減させることで、金融機関のお金のやりくりに影響を与え、結果として短期金利を変動させる、という仕組みになっているんですね。

日銀は、私たちの経済の状況を見ながら、こうした公開市場操作を毎日、あるいは定期的に行って、世の中のお金の流れを調整し、私たちが安心して暮らせるように、物価の安定という大切な目標を達成しようと頑張っているんですよ。