【補助金】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」、通称「ものづくり補助金」


経済産業省が所管する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」、通称「ものづくり補助金」は、中小企業・小規模事業者の生産性向上と持続的な賃上げを目的とした、革新的な製品・サービス開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援する補助金です。

以下に、その詳細をまとめます(最新の公募要領に基づき、変更がある可能性がありますので、申請時には必ず公式情報をご確認ください)。

1. 目的

ものづくり補助金は、雇用の多くを占める中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援することで、日本経済の足腰を強くすることを目指しています。具体的には、以下の達成を目標としています。

  • 付加価値額の向上: 事業終了後3年で、補助事業者が付加価値額を9%以上向上させる。
  • 賃上げ: 事業終了後5年で、給与支給総額が年率平均+1.5%以上向上させる。

2. 対象事業者

日本国内に本社および事業実施場所を有する中小企業者等(NPO法人、個人事業主も含む)が対象です。具体的には、資本金や常時使用する従業員数が以下の基準を満たす必要があります。

業種・組織形態 資本金(または出資総額) 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業、その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
特定非営利活動法人(NPO法人) なし 300人以下

主な要件(基本要件)

  • 事業計画期間(3~5年)において、給与支給総額を年率平均+2.0%以上増加させること。
  • 事業計画期間の毎年3月において、事業場内最低賃金を事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上とすること。
  • 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均+3%以上増加させること。

これらの要件が未達の場合、補助金返還義務が発生する場合があります。

3. 補助対象事業の類型と補助上限額・補助率

令和5年度補正予算(第17次公募以降)では、主に以下の2つの申請枠に整理統合されました。

a. 製品・サービス高付加価値化枠 革新的な製品・サービス開発の取り組みに必要な設備やシステム投資などを支援します。

従業員数 補助上限額 補助率
5人以下 750万円 中小企業 1/2、小規模企業・小規模事業者 2/3
6~20人 1,000万円 中小企業 1/2、小規模企業・小規模事業者 2/3
21~50人 1,500万円 中小企業 1/2、小規模企業・小規模事業者 2/3
51人以上 2,500万円 中小企業 1/2、小規模企業・小規模事業者 2/3

b. グローバル枠 海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資などを支援します。

  • 補助上限額: 3,000万円
  • 補助率: 中小企業 1/2、小規模企業・小規模事業者 2/3

【大幅賃上げに係る補助上限額の引き上げ特例】 特定の賃上げ要件を満たすことで、各枠の補助上限額がさらに引き上げられます。

従業員数 上乗せ補助額
5人以下 最大100万円
6~20人 最大250万円
21~50人 最大1,000万円
51人以上 最大1,000万円

4. 補助対象経費

主な対象経費は以下の通りです。

  • 機械装置・システム構築費(必須): 新製品・サービス開発や生産プロセス改善に必要な機械設備、ソフトウェア、情報システム等の購入費、構築費、借用費。原則として単価50万円以上(税抜き)のものが対象。
  • 技術導入費: 新技術導入に係る特許権等導入費用。
  • 専門家経費: 専門家からの指導・助言等に要する経費。
  • 運搬費: 補助対象の機械装置等を運搬するために要する経費。
  • クラウドサービス利用費: クラウドサービスの利用費用(補助事業期間中に利用する費用に限る)。
  • 原材料費: 試作品開発等に必要な原材料、副資材の購入に要する経費。
  • 外注費: 加工や設計などを外部に委託する経費。
  • 知的財産権等関連経費: 特許等の出願に要する経費。
  • グローバル枠の追加対象経費: 海外旅費、広告宣伝費、販売促進費など。

対象とならない経費の例

  • 汎用性があり、補助事業以外の用途にも利用可能なもの(パソコン、スマートフォン、タブレット端末、複合機など)。
  • 車両本体(一部例外あり)、不動産、リース費用。
  • 人件費、旅費(グローバル枠除く)、消耗品費、通信費、光熱水費など。

5. 公募スケジュール(第19次公募以降)

ものづくり補助金は、年に複数回公募が行われます。2025年度の公募スケジュールは以下の通りです。

  • 第19次公募:
    • 公募開始: 2025年2月14日(金)
    • 電子申請受付: 2025年4月11日(金)17:00~
    • 申請締切: 2025年4月25日(金)17:00
    • 採択公表: 2025年7月下旬頃予定
  • 第20次公募:
    • 公募開始日: 2025年4月25日(金)
    • 申請受付開始日: 2025年7月1日(火)予定
    • 申請締切日: 2025年7月25日(金)17:00
    • 採択結果発表日: 2025年10月下旬(予定)

以降も継続的に公募される見込みです。

6. 申請方法

電子申請システム「Jグランツ」を通じて行われます。GビズIDプライムアカウントの取得が必要です。

7. 事業実施期間

交付決定日から原則10か月以内(ただし、採択発表日から12か月後の日まで)に、発注・納入・検収・支払等のすべての事業の手続きを完了する必要があります。グローバル枠の場合は、交付決定日から最大12か月間(採択発表日から14か月後の日まで)です。

8. 採択のポイント

採択率は例年30~40%程度で推移しています。採択されるためには、以下の点が重要とされます。

  • 革新性・優位性: 申請する事業が、競合他社と比較して独自性や優位性があるか。
  • 事業化の見込み: 補助事業を通じて、確実に製品・サービスが市場に展開され、収益が見込めるか。
  • 計画の具体性: 投資計画、資金計画、スケジュールなどが具体的で実現可能性が高いか。
  • 体制の明確化: 実施体制、担当者の専門性などが明確か。
  • 賃上げ・付加価値額目標の妥当性: 設定した賃上げ目標や付加価値額の目標が、根拠に基づき達成可能か。
  • 加点項目への対応: 賃上げ表明、BCP(事業継続力強化計画)の策定、デジタル化への対応、事業継続計画の策定、再生事業者であることなど、公募要領に記載されている加点項目に対応することで採択されやすくなります。

参考情報・問い合わせ先

  • ものづくり補助事業公式ホームページ: 最新の公募要領やQ&A、採択事例などが掲載されています。
  • 中小企業庁 ミラサポPlus: 補助金・助成金情報を幅広く提供しています。
  • 各地域のよろず支援拠点、商工会議所・商工会: 無料相談窓口として、事業計画策定や申請に関するアドバイスを受けることができます。

ものづくり補助金は非常に人気が高く、競争率も高い補助金です。申請を検討される場合は、最新の公募要領を熟読し、専門家や支援機関に相談しながら、周到な準備を進めることをお勧めします。